歯のはなしスペシャル

口のしくみと病気

少し気になる病気の原因と治療法がわかります。
私たちの体の中で、心臓や肝臓と言った臓器が、生命を支えるためにはたらいています。しかし、口の中のこととなればなぜか、気にはしているが歯がなくても命に支障がないからと言って、そのままになっている場合もあります。基本的な口の仕組みを見ながら、病気の症状や原因、治療法の最前線、予防法について分かりやすく解説します。

歯ブラシ■歯は、目や耳と同じ感覚の受容器である。
歯は目や耳と同じ?
歯は食べ物を砕くだけの、なにか無機質な感じで目や耳のよう繊細な臓器とは程遠いように思う。しかしその口のメカニズムを知れば必ず納得できるはずだ。
沢庵をバリバリ、せんべいをパリパリこれも味覚の大切な感覚である。このバリバリ、パリパリは何処で感じるのか?脳は感覚器を通じて外からのさまざまな情報を受け取り、その情報を処理して指令を出し、運動器がその指令を実行する。目、耳、鼻と同じように口全体にさまざまな感覚器がびっしりと内蔵されているのだ。
口の中の情報は、大脳に入力され、処理され、咀嚼筋、舌などに出力されて口の機能を高めているのである。大脳から出ている神経の太さを比較してもその重要さを推し量ることが出来る。
歯は歯槽骨と言う骨の中に根を下ろしている。歯の根と歯槽骨とは歯根膜と言う、非常に強靭な靭帯で支えられているのだ。その歯根膜という強靭な靭帯の間に感圧の受容器と言われる、超高感度のセンサーがびっしりととり囲んでいる。そのセンサーの働きは、食物の中にもし小さな石でも入っていて咬み砕きそうになればそのセンサーが瞬時にして咀嚼筋の収縮をとめ、大切な歯を保護しようとするのである。

■歯、歯根膜、舌、咀嚼筋も脳によって支配されている。
自律神経は、意識的にコントロール出来ない内蔵の働きを制御している神経である。自律神経には、交感神経と副交感神経という2種類の相反する働きを行う神経がある。交感神経は体に危険が迫ったときやストレスを受けたときに働く。
例えばストレスを受けているときや、緊張しているときに無意識のうちに、口の中の唾液の出るのが少なくなり、からからになり舌が回りにくくなる。そして強い力で歯を食いしばっていることに気づくことがある。逆に落ち着いてくると、副交感神経の働きによって、唾液腺の働きがよくなり唾液がよく出てくるので、ゆったりと食事が出来るのである。

■口の健康や機能を悪くする原因となる、すべての因子がわかる。
口はその周囲の咀嚼系(筋肉系、骨格系、神経系、循環系)のすべての調和がなければ、最適な口の健康を手に入れることは出来ない。これらの器官は単独に働いているわけではない。
互いに関係を保ちながら、巧みに健康を維持しているのである。咀嚼系のある部分に何らかの問題があれば、いつかは他の部分に波及するであろう。歯、筋肉、関節、骨、靭帯の形や、機能の変化は相互に影響を及ぼす。

待合■顎骨と咀嚼筋の共同作業で咀嚼の動きが作られる。
リンゴのまるかじりをしようとする。リンゴを口に近づける。頭を少し上方に傾けると同時に下あごを最適な位置に調節する。リンゴの大きさを計りながら下顎は少し前のほうに移動させる。
リンゴに食い込むように上顎の前歯と下顎の前歯を押し付けながら、咀嚼筋の収縮を調節しかぶりつく。上下の前歯の歯根膜にあるセンサーでリンゴの中に前歯の先が食い込むのを確認し、リンゴのかけらが口の中に入るまで咀嚼筋を収縮させ咬みこんでいく。そのときリンゴからこぼれ出るジュースをもらさないようにくちびるで受ける。
実際はこれほど単純なものではない。しかし、誰もそのようなことを意識してリンゴを食べる人はいない。咀嚼系の共同作業が大きな働きをしているのである。

■咀嚼系すべての部分の位置、形、並び方、には全て理由がある。
グラグラと歯が動いたり、また他の歯はすり減ってきたりするには理由がある。顎が開かなくなったり、痛みが出てきたり、筋肉が痛くなったりするにも理由がある。

■最先端の歯科治療には口のしくみと、その病気の完全理解からはじまる。
歯科医師はできる限り、最高の口の健康を提供し、これを長持させなければならない。
口の病気は一つの原因で起こることはまれである。必ずいくつかの原因の組み合わせの結果おこる。おなじ原因でも体のもつ感受性の違いから、さまざまな問題がおこる。時には全く違った症状でも、原因はその因子の強さの違いから来る場合がある。
またよく似た症状であっても、完全に異なる原因から発生したり、さまざまな症状が同じ原因因子から発生したりするので、対症療法は近視眼的療法と言える。

■健康で完全な口の中に一本だけ高くあっていない人工の歯を被せたとする。
高くてあっていない人工の歯によって、その他が完全であるはずの口の中がどのような反応をするのか?予想されるさまざまな反応を考えてみると、何と15通りの異なる反応をする。(オクルージョンの臨床・川村貞行訳より引用する)
〔1〕うまく合っていない高い歯は、度重なる強い力の負担のために歯の神経が刺激される。歯の中の神経が充血し今までの刺激では感じなかった、熱さや冷さに過敏になるか、痛みが出るようになる。いわゆる熱いのや冷たいのにしみるようになる。
〔2〕さらに、度重なる強い力の負担のために歯を支えている歯根膜が外傷となり、その歯に少し触れるだけで痛みを感じる。
〔3〕歯を支えている歯根膜が外傷となり、さらに歯の周りの歯槽骨が少し無くなる、歯根膜が断裂し動揺し始める。
〔4〕度重なる強い力の負担に対して、歯根膜や歯槽骨が充分抵抗できた場合、今度は歯がすり減ってくる。
〔5〕高いクラウンが被っている歯の、歯根膜にある高感度のセンサーにより、噛み合わせが調和していないことを感知する。咬みやすそうな位置を求めて、下顎の位置が変化し、その結果、ほかの歯がすり減ってくる。
〔6〕咬みやすそうな位置を求めて、下顎の位置が変化し、そのまま強く咬んでいると、ほかの歯が動揺し始める。
〔7〕歯根膜にあるセンサーが常に興奮状態となり、咬みやすそうな位置を求めて下顎が位置変化する。そのまま強く咬んでいると、咀嚼筋が過度の活動状態になるか、痙撃の原因になる。
〔8〕筋肉が痙攣して、口が開きにくくなる。
〔9〕筋肉の緊張により頭痛が起こる。
〔10〕歯痛、筋肉痛、頭痛が組み合わさって、緊張と咬合ストレスの原因となる。
〔11〕緊張とストレスは、うつ状態を引き起こす。
〔12〕下顎の位置異常と筋肉の痙攣が組み合わさって、顎関節に問題を引き起こす。
〔13〕顎関節の中に障害が起こり、筋肉の痙攣と合併して、顎関節が変性関節炎の変化を始める。
〔14〕1~13全てが生じる。
〔15〕何も症状は発生しない。

1~15までの状態は一本のあっていない人工の歯冠を被せることによって起こる生体の反応である。もし、不可逆的な生体の変化が起こるまでに調整できれば、全ての症状は消滅することになる。